ワークブースと事務所衛生基準規則|照度・気積・換気の条文と確認先

ワークブースを置くとき、消防法は必ず話題になります。ところが労働安全衛生法と事務所衛生基準規則は、ほとんど語られません。照度・気積・換気には条文で数値が決まっていて、総務や産業医から質問が出るのはむしろこちらです。この記事では条文と数値を先に出し、そのうえで個室ブースに当てはめるとどう考えることになるのかを整理します。

選定の全体像はWeb会議ブースの選定で失敗しない7つのチェック項目、消防法の扱いはワークブースと消防法にまとめています。

1. 先に結論:ワークブースを名指しした基準は存在しない

調べた範囲では、事務所衛生基準規則にも労働安全衛生規則にも、「ワークブース」「個室ブース」を名指しした条文はありません。厚生労働省が個室ブースの扱いについて示した公的な解釈資料も、2026年9月時点では見当たりませんでした。

そのため実務では、事務室に置かれた什器として扱い、基準は事務室全体で満たすという整理をとることになります。これは条文に明記された答えではありません。密閉型を1日中の常時執務に使うなど判断が割れそうな使い方をする場合は、所轄の労働基準監督署に確認するのが確実です。

以下では「では条文には何がどう書いてあるのか」を、数値まで含めて確認していきます。

2. 数値が決まっている項目(条文と基準値)

事務所衛生基準規則のうち、ワークブースの検討に関係する条文を抜き出すと次のとおりです[1]。いずれも「室」(労働者を常時就業させる室)に対する基準です。

項目 条文 基準
気積 第2条 労働者1人あたり10m³以上。設備の占める容積と、床から4mを超える高さの空間は除く
換気(自然換気) 第3条第1項 直接外気に向かって開放できる開口部の面積が、常時 床面積の20分の1以上
一酸化炭素・二酸化炭素 第3条第2項 一酸化炭素 50ppm以下/二酸化炭素 5,000ppm以下
空気調和設備がある場合 第5条第1項 一酸化炭素 10ppm以下/二酸化炭素 1,000ppm以下/浮遊粉じん 0.15mg/m³以下/ホルムアルデヒド 0.1mg/m³以下
気流 第5条第2項 0.5m/s以下
室温・湿度(空調あり) 第5条第3項 18℃以上28℃以下、相対湿度40%以上70%以下(努力義務)
照度 第10条第1項 一般的な事務作業 300ルクス以上/付随的な事務作業 150ルクス以上
照明設備の点検 第10条第3項 6か月以内ごとに1回

照度が現行の2区分になったのは2022年12月1日からです。それ以前の「精密な作業 300ルクス以上/普通の作業 150ルクス以上/粗な作業 70ルクス以上」という3区分を前提にした社内資料が残っている場合は、差し替えが必要です[2]。空調がある室の室温の下限が17℃から18℃になったのは2022年4月1日施行です[2]

2-1. 照度は製品の性能ではなく、置いたあとの実測で決まる

照度の基準は「室の作業面」に対するものです。ブース本体にどれだけ立派な照明が付いていても、実際にPCを置く机の上で300ルクスを下回れば基準を満たしません。逆に、天井の開いた構造で室内照明の光が入るなら、照明を内蔵していなくても足りることがあります。

カタログの数値ではなく、設置後に照度計で机上面を測るのが確実です。スマートフォンのアプリでも傾向はつかめます。社内記録に残すなら実機の照度計をおすすめします。足りない場合はデスクライトを1台足せば解決するケースがほとんどです。

2-2. 騒音の条文は、Web会議には直接効かない

事務所衛生基準規則には騒音の条文が2つあります。第11条は「労働者に有害な影響を及ぼすおそれのある騒音又は振動」について隔壁を設けるなどの措置を求めるもの、第12条は「騒音を発する事務用機器を5台以上集中して同時に使用するとき」に遮音・吸音の天井と壁で区画した専用室を設けるよう求めるものです[1]

第12条はタイプライターやプリンタを想定した条文で、Web会議の話し声を直接の対象にしてはいません。「Web会議がうるさいからブースを置かないと法令違反になる」という説明を見かけることがありますが、条文上の根拠としては弱いと考えたほうが安全です。ブースを入れる理由は、法令対応ではなく執務環境の改善として説明するほうが、稟議でも通りやすくなります。

音がどこまで下がるのかはオフィスのWeb会議の声漏れ・音漏れ対策で手段別に比較しています。

3. 気積10m³を、ブース単体で満たすことはできない

第2条の気積は労働者1人あたり10m³以上です。ここが個室ブースで最初に引っかかる点です。

一般的な1名用ワークブースの外寸は、幅1,000mm前後×奥行1,200mm前後×高さ1,800〜2,300mm程度です。外寸から単純に体積を出しても2〜3m³前後にしかならず、10m³には遠く届きません。内寸で計算すればさらに小さくなります。

考え方 気積の判定
ブースの中を独立した「室」とみなす 1名用ブースはまず満たせない
ブースを事務室に置かれた什器とみなす 事務室全体で10m³/人を満たしていればよい

どちらが正しいかを明示した公的資料は見つかりませんでした。手がかりになるのは、第2条が「設備の占める容積」を気積から差し引くと書いている点です。ブースを「設備」の側に置いた読み方のほうが条文の構造とは整合的です。この読み方をとる場合、ブースの体積は事務室の気積から差し引く必要があるため、もともと1人あたりの気積に余裕がない事務室では、台数を増やすほど数字が苦しくなります。

必要台数の考え方はワークブースは何台必要か、1台あたりに必要な床面積はワークブースの設置スペースにまとめています。

4. 天井が開いているか閉じているかで、考え方が変わる

気積と換気の議論は、結局のところ「その空間が事務室とつながっているかどうか」に行き着きます。ここで天井の構造が効いてきます。

構造 空気の扱い 換気の考え方
天井開口型 事務室の空気と連続している 事務室側の換気が基準を満たしていれば、ブース内も同じ空気
密閉型 事務室から区切られている ブース側の換気設備(ファン)の能力に依存する

密閉型が悪いという話ではありません。遮音を優先するなら密閉型が有利です。密閉型は「独立した小さな室」に近づくぶん、換気・二酸化炭素濃度・室温の説明責任がブース側に寄ってくる、という違いを押さえておけば足ります。長時間の常時執務に使う想定なら、なおさらです。

密閉型と天井開口型の違い、夏場の温度上昇についてはワークブースの換気と暑さ対策で詳しく扱っています。

5. WOOBOの場合はどうなるか

自社製品についても、同じ物差しで確認しておきます。

項目 WOOBOの状態
外寸 幅1,050 × 奥行1,330 × 高さ1,830 mm(設置面積 約1.40㎡)
体積の目安 外寸ベースで約2.6m³。単体で気積10m³は満たさない
天井 開口式が標準。事務室の空気と連続している
換気設備 本体には内蔵していない(事務室側の換気に依存する)
照明 本体には内蔵していない。机上面の照度は設置場所の照明で決まる
電源 既存コンセント1口で完結。建物側の電気工事は不要

気積10m³を単体で満たせないのはWOOBOも同じです。1名用の個室ブースで単体10m³を満たせる製品は、事実上ありません。天井が開いている構造は、遮音では不利になる一方、空気の扱いでは説明が簡単になります。どちらを重く見るかは用途しだいです。

電源まわりの確認点はワークブースに電気工事は必要?、仕様と価格の全体像は仕様・価格・納期のすべてにまとめています。

6. 設置前に確認しておく5項目

  • 事務室全体の気積:1人あたり10m³を満たしているか。ブースの体積を差し引いても余裕があるか
  • 机上面の照度:設置予定の位置で300ルクス以上あるか。足りなければデスクライトを追加できるか
  • 換気の経路:密閉型ならファンの能力、天井開口型なら事務室側の換気が基準を満たしているか
  • 夏場の室温:空調の吹き出しがブースに届くか。18〜28℃から外れないか
  • 使い方の想定:短時間のWeb会議用か、1日中の常時執務か。後者なら労働基準監督署に相談しておく

これらを稟議資料に落とし込む形はワークブース導入の社内稟議の通し方で整理しています。

よくある質問

ワークブースを置くと事務所衛生基準規則に違反しますか?

ブースを置くこと自体を禁じたり制限したりする条文はありません。確認が必要なのは、ブースを置いたあとも事務室全体が気積・換気・照度の基準を満たしているか、という点です。

ブースの中は気積10m³を満たしていませんが、問題になりませんか?

1名用の個室ブースで単体10m³を満たせる製品は事実上ありません。実務ではブースを事務室内の什器として扱い、事務室全体で基準を満たす整理をとることになります。ただしこれを明示した公的資料はないため、密閉型を常時執務に使う場合などは所轄の労働基準監督署に確認してください。

ブース内の照度は何ルクス必要ですか?

一般的な事務作業なら作業面で300ルクス以上、資料の袋詰めなど文字を細かく読まない付随的な作業なら150ルクス以上です。2022年12月1日から現行のこの2区分になりました。

空調のある事務所の室温の基準は何度ですか?

18℃以上28℃以下です。2022年4月1日の改正で、下限が17℃から18℃に引き上げられました。相対湿度は40%以上70%以下です。いずれも努力義務です。

Web会議の話し声はうるさいので、ブース設置は法令上の義務になりますか?

義務ではありません。騒音の条文(第12条)は事務用機器を5台以上集中して使う場合を対象にしたもので、話し声を直接の対象にしていません。ブース導入は法令対応ではなく執務環境の改善として説明するほうが正確です。

天井が開いているブースと密閉型では、どちらが法令上有利ですか?

有利・不利という条文はありません。天井開口型は事務室の空気と連続しているため換気の説明が事務室側で完結し、密閉型は遮音で有利な一方、換気や二酸化炭素濃度の説明がブース側に寄る、という違いがあります。

関連リンク

出典

  1. 事務所衛生基準規則(昭和47年労働省令第43号)|e-Gov法令検索(令和4年12月1日施行・2026年9月5日確認)
  2. 職場における労働衛生基準が変わりました|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署(PDF・2026年9月5日確認)
  3. 自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備|厚生労働省(2026年9月5日確認)

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